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SusakiVeterinarian's Column

免疫介在性溶血性貧血と診断され、もう治りませんと言われた話

Colum No.17

「かかりつけの動物病院で、もう治らないといわれました…」
そんな飼い主さんがよく須崎動物病院にお越しになります。

生物に100%はありませんから、個人的には最初から「治らない」と考えて取り組むより、何か方法はないかと試行錯誤するスタンスで取り組んでおります。それが例え最終的には治らなかったとしてもです。


「治りません」→飼い主さんが暗くなる

免疫介在性溶血性貧血(自己免疫性疾患の一つ)と診断され、「もう治らないから対症療法をするしかない」と言われて、毎日
「死なないで…死なないで…」
と泣いて暮らしていた飼い主さんがいらっしゃいました。

その時点ではかかりつけの動物病院でステロイド薬を中心とした「対症療法」でコントロールしていただいていたので、当院では「身体の中で何が起こっているのか?」を探ることになりました。

いわゆる「治りにくい病気」の場合、飼い主さんが悲壮感を漂わせて付き添うことが珍しくありませんが、それは決して良いことではありません。
それはなぜでしょうか?


飼い主さんが暗くなると良くない理由

想像してみて下さい。

あなたが具合悪くて寝込んだとき、家族が寝ているあなたを取り囲んでいますが、次の二つでどちらが治りそうですか?
1)全員が眉間にしわを寄せて、神妙な面持ちで、暗いトーンで「死なないで…」と言っている状態
2)明るい笑顔で、「大丈夫、大丈夫!数日寝てたら治るから!しんどかったら言って!」と言っている状態

もちろん、2ですよね?

1の状態だったら、「お願いだからどっか行ってくれ!治るものも治らない!」と思いませんか?


飼い主さんが脳で考えたイメージがペットに影響する

「脳は考えたことを現実に反映させる臓器」で、「脳はイメージで考える」という原則があります。
そして、その考えていること、その人の雰囲気をペットは感じ取り、影響を受けることがあります。

また、心理学でいわれていることに「脳は否定形を理解できない」というものがあります。

子供が水を運ぶときに「こぼさないでね」と声をかけるとき、脳は「こぼしている状況」をイメージしています。それは、相手にも影響するという説がありますから、口では「こぼさないでね」と言っても、実際には「こぼせ!」と言っているのと同じです。

感の良い方はもうお気づきかと思いますが、
「悪化しないでね」
「どこか悪くなってない?」
「私をおいていかないで…」
「私を独りにしないで…」
「死なないで…」
というイメージを飼い主さんが抱くことは、どんなメッセージをペットに送っていることになるのでしょうか?


健康を意識することと病気にならないように意識することは全く違う

「健康のためなら死ねます!」
という勢いを感じる程、健康に気を遣っている方をときどきお見受けしますが、そんな人に限って頻繁に具合悪くなっていたりします。
逆に、「健康のためにしていること?健康とか、考えたことないです(笑)」ぐらいの豪快な方の方が、健康度が高かったりします。

健康を意識することは大事ですが、「病気にならないように」意識することは、決して好ましいことではないのです。(この一文、とても大事です)

もちろん、飼い主さんはペットに死んで欲しくて「死なないで…」と考えたり、口にしているわけではありません。大抵の飼い主さんはどうしたらいいのか明確に知っているわけでは無く、良かれと思って「心配」するものです。しかしその態度はペットにとって決して好ましくはないということを覚えておいてください。

このことを正確に理解していただけたら、「わかっているけれどできません」とはならず、「では、どうしたらそうできるのか?」という質問に変わるはずです。


治らないといわれたら、病気を正確に理解しよう

思考・行動を変えるためには、「適切な理解」が重要です。

「中途半端な理解」で終わると、迷宮にハマります。

迷宮にハマらないためにも、個々のケースで適切な情報をもとに、適切な理解をしていただきたいと思います。

先の、免疫介在性溶血性貧血と診断された犬は、脾臓が腫れていました。
腫れているからには腫れる理由(異物の存在)があるはずなので、それを探って取り除く努力をしたところ、五ヶ月で赤血球数が基準値に戻り、七ヶ月でその腫れはほとんどわからなくなり、「なぜか治らないはずだった免疫介在性溶血性貧血が正常に戻っている…」と、かかりつけの先生に言われたそうです。


結果があるからには必ず原因がある

「その方法では原因が探れなかった」ことはあっても、原因が存在しない事はないのです。

難しい名前の病気の場合、特に、漢字が十文字も続くと難しい病気の様な印象があるのですが、免疫介在性溶血性貧血とは、
「白血球が攻撃しなければならない事態(免疫介在性)が生じ、そのとばっちりを受けて赤血球が破壊され(溶血)、貧血になった状態」
です。

その犬の時は、白血球の攻撃を止める対処(ステロイド薬投与や免疫抑制剤投与)で症状を抑えつつ、白血球が闘わなければならないと感じた原因を取り除く治療をするというアプローチを取ったら、たまたまかもしれませんが、うまく行きました。

このとき、飼い主さんが「何度も心が折れそうになりました。『ネットで調べるとろくなことがないから調べるな』と先生に言われましたが、ついつい調べては『どこにも治るとは書いていないし、死ぬとしか書いていない』ので、落ち込んでいました。でも、診療に行くたびに『そばにいる飼い主がメソメソしてどうする!』と叱咤激励されました。私の心が落ち着いてきた頃から、この子の調子が上向きになったと思います。」とおっしゃったのが印象的でした。

ですから、飼い主さんには希望をもってペットと接していただき、対症療法と原因療法を上手に活用して、症状を抑えつつ、原因も取り除いていただきたいものです。


健全思考+対症療法+原因療法

免疫介在性溶血性貧血に限らず、治りにくい疾患と診断されたとき、動物病院で暗くなることを言われ、ネットで調べても明るい材料はなく、落ち込んで泣いて暮らす飼い主さんが少なくありません。

しかし、先に申した通り、側にいる方がどんな精神状態かは、愛犬・愛猫が健康を回復するのに影響する可能性があります。

かといって、不安なことを見ないようにして、不自然に前向きになると、潜在意識で「不安」が大きく育ちがちです。こうなってしまうと、「努力逆転の法則」により、努力が空回りすることになるかもしれません。

ぜひ、愛犬・愛猫のためにも、飼い主さん自身のためにも、適切な理解と、希望の持てる治療に取り組んでいただきたいと思います。

他の飼い主さんにも
「インターネットで検索すると暗くなるような情報しかなかったけれど、頑張ってみようと気持ちを変えるキッカケになりました!」
と言っていただけたので、きっとお困りの方には心の支えや、適切な治療選択のキッカケの一つになる情報かもしれません。

対症療法では症状を抑えればよいのでほとんどのケースに当てはまる症状の消し方はあるかもしれません。

しかし、原因療法的観点では、原因が異なれば取り組むことは変わるので、どのケースにも当てはまる「万能の免疫介在性溶血性貧血の治し方」は存在せず、個々のケースに応じた対応をするしかありません。

そのためにも、「症状を緩和させつつ、原因を探って取り除いたら、解決する可能性はあるかもしれない」し、そのためにも、飼い主さんは適切な知識を入手して、適切な理解と適切な心のあり方で、愛犬・愛猫の体調不良を支えていただきたいと個人的に思っております。

この文章が、免疫介在性溶血性貧血と診断されて落ち込んでいる飼い主さんにとって、なんらかの心の支えとしてお役に立てれば幸いです。


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